2014/07/21

華麗なるギャツビーの世界

大学の時に英米文学部だった私は、古英語から近代文学までまんべんなくそれなりに学んだはずなのだけど、驚くことに社会人になってからそのほとんどを忘れてしまった。(しっかりと授業を聞いていなかったのも原因であるが)

そんな中でもアメリカ文学の授業の中で記憶に深く残った作品は、スコット・フィッツジェラルド作の『The Great Gatsby』(華麗なるギャツビー)だ。ギャッツビーは何度か映像化・舞台化を経ているが、2013年にもレオナルド・ディカプリオ主演で映画化されている。

当時映画を友人と観にいったわたしは、終わった後もしばらく茫然としてしまうくらい、映像の美しさと俳優たちの世界観に圧倒された。稚拙な言い方ではあるが、観た後は大きな問いをなげられたような、ずっしりお考えこんでしまうような作品だった。当時周りにも観た人が多かったので、万人に受けいれられたクラシックな米文学作品の一つではないだろうか。


物語は語りべであるニックが過去を振り返るところから始まる。


ニックの住む家の隣人であったギャツビー氏と彼を取り巻く人々を中心に、1922年のニューヨークでの豪華絢爛な生活が展開される。しかし、一見幸福そうに見える登場人物たちも、それぞれが秘密や悩みを抱えていたのだ。

この映画において、私が一番素晴らしいと思うのは「映像」だ。お気に入りは部屋中に舞うカーテンのシーンと、ギャツビー氏の登場シーンである。花火が次々に打ち上がる中で華麗に振り返りギャッツビーが登場するシーンは、まるで彼のパーティーに招待されような気持ちになった。


本作は決してハッピーエンドと呼べるようなものではない。
どんな時代も人の世は、愛情と憎しみが誤解や恨みを招くのだな、と考えさせられる作品だ。

作品の著者であるスコットはいかにして華麗なるギャツビーを作り上げたのだろうか。
事実、彼とその妻・ゼルダの人生を振り返ると、不思議なほどにギャツビーの世界観と重なるところがある。
スコットのひとめぼれから始まったゼルダとの恋物語は、二人の結婚後も刺激的だった。
パーティー好きの夫婦は今で言う若手セレブカップルであり、夜な夜な派手な世界で新しい人々との出会いを楽しんだ。


劇中でニックの従姉妹であるデイジーがポツリと言う一言。
"I hope she'll be a fool- that's the best thing a girl can be in this world, a beautiful little fool."という言葉は、妻・ゼルダが実際に娘を産んだ時に言った言葉である。

好景気に沸くアメリカで、ゼルダは女性として賢く生きるポリシーのようなものを、彼女なりに持っていたのだろう。しかし、そんな彼女の言動を皮肉るかの如くスコットは自身の作品に引用した。
アメリカが好景気で華やいだ時代に咲いた作家の人気は、経済の低迷と共に下り坂となっていく。「栄枯盛衰」という言葉がピッタリな本作は、序盤の華美な映像が嘘のように、終盤に進むに従って暗く静かなものとなっていく。

メインテーマを担当したLana Del Rayの歌声も世界観にまさにぴったりで、20’sのフラッパーファッションもとっても可愛い。女性たちのボブヘアーがすごく印象的だった。





こうやって昔の作品がリバイバルされて、現代を生きる私たちが彼らの生きた時代を知ることは個人的に素晴らしいと思う。ストーリーが面白いのはもちろんだが、アメリカの歴史を知るためにも良し、劇中のファッションを楽しみたいだけの人にも適している。映像だけでも観る価値のある作品だと心から断言できる。

作家の多くが自身の体験を作品に投影するだろう。
スコット・フィッツジェラルドの人生を巡ると、華麗なるギャツビーという作品がいかにして完成したのか、容易く想像できる。
栄枯盛衰の儚さに隠れた美しさや、人々の賢明さを本作では上手に映像で表現していると思う。美しいものが好きな人は必見の一作だ。


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